2005年09月06日

FPNアルファブロガー座談会第3回の報告をアップしました!

諸事情により遅れ馳せながらようやくFPNに掲載することができました、第3回アルファブロガー座談会、橋本大也さんと伊藤直也さんの会。
やや技術寄りではありましたが、お二方のものを見る姿勢・視点や、仕事の取り組みなどについてもとても参考になる座談会であったと思います。

ちょっと長いので、FPNのほうでは前編・後編にわけて掲載しました。

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■書評・読書について
――1日のなかでいつ本を読まれますか?
(橋本)書評は、通勤時間1時間半くらいなので、その行き帰りに、常に2〜3冊、かたいのとやわらかいのとそれ以外とをもって、そのときの気分で読んでいます。本を選ぶのは本屋さんのほうが多いです。速度は一般的な難易度のレベルで、1時間で100ページ読むのですが、どこを引用するかを、付箋をつけたり、メモをとったりして決めています。最初から書評を書くつもりで書いていますね。ブログを書き始めてからは、書評を書かないと本を読んだ気がしないです。amazonのリンクをつくるのに使うのはZakuCopy (http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002441.html)ですね。
書評は、ただ引用だけするのはつまらないので、「その先」を考えて書くようにはしています。
(直也)僕は月に2冊読むか読まないかくらいですが、ビジネス書と技術書とを読みます。昔、プログラミングの技術が身についていない頃は本に基礎が書いてあるので読んだのですが、書籍は「売れ筋」を狙って企画されるので、エンジニアが基礎を身につけたあとの次のステップは書かれていないんです。技術書を読むのは、最近は、枯れている技術に手をつけるときだけになりました。また一方でWEBではやっている技術、「Ajax」などは本だとわからないですね。

■仕事について
――プログラムのやり方が、はてなに移られてから変わったことはありますか?
(直也)プログラマはみんな同じ頭のロジックがあるわけではないですよね。
自分は「右脳派プログラマ」ですね。ひたすら書きながら組み立てています。
周りを見ていると「右脳派プログラマ」はそんなに多くなくて、いまの会社では近藤さん(社長)と僕くらいですね。
「右脳派プログラマ」は深いロジックを丁寧に組み立ててつくっていくことが苦手なんです。だからそこは補完しあうんです。お互いに。
――右脳派の人は科学系が苦手という傾向があるらしいですが。
(直也)僕は数学が苦手でした。理系でしたが、中学でも数学はいちばん成績が悪かったです。
数学ができないと優秀なプログラマになれないとか、理系じゃないとプログラマになれないということはないですね。
――橋本さんはプログラミングはされるのですか。
(橋本)僕は趣味で書いています。はまると一晩中書いていることもあります。
仕事でIT関連のことがあるので、技術の人と話があわせられるというのはありますね。
(直也)社長がプログラマだというのは違うなと感じます。プロジェクトが「やりたくなくて進んでいないのか」「難しくて進んでいないのか」というときに、「やりたくなくて」止まっているのに「やれ!」と言うと、「なんだよ」となりますが、「むずかしくて」止まっているときに「やれ」というと頑張ろう!と思うということになったりしますね。さじ加減がすごく重要です。
リーダーになる人は現場の話を理解できることが大事です。
それは仕事に限らず何でもそうだと思います。サッカーが下手な人がキャプテンだと、まんがの世界だといい人間だからとかなりますが、現実はそうじゃないですよね。
僕は剣道をやっていたのですが、剣道が下手な監督だと、「こんな奴のこと聞いていられない」と思いましたね。
それはロジックじゃなく心理的なものですね。
はてなという会社について言えば、人数が少なく、プログラマに囲まれているので、とてもよい会社だと思います。
大きい会社だと、「プログラムが書きたい」と言っても、「いや、うちはプログラマはいらないんだよ、プログラマを使う側の人間になれ」と言われますけど、はてなではそういうことがないので、ストレスはほとんどないですね。
――会社の仕事の進め方について。
(直也)仕様は朝、雑談で決めて各自が動きます。仕様書は読んだためしがないです。
新しい人が入ってきても、ペアプログラムをしますので1週間もすれば同じレベルで書けるようになります。
※註 ペアプログラミングについてはこちら: http://blog.japan.cnet.com/kondo/archives/002275.html

■インターネットについて
(橋本)WEBサービスをどうするかというのは、ブラックボックスを動かすようで、怖いことは怖いですね。デバックとかやりづらいし。
ブログ貼り付けツールなどは最近おそるおそる使っているのですが、JavaScriptで向こうからHTMLで飛んできているので、悪用しようと思えばできてしまうものがあります。最近ネットは、相手を信頼していないと使えないと感じるものは多いですね。
だから、信頼ポイントはこれから重要になるんじゃないかと思いますね。
(直也)売買に応じて信頼ポイントをあげているというもの、信頼度をどのように数値化するのかというものはありますよね。
(橋本)ブログのメタデータで信頼が問われるような気がしています。メタデータってみんな勝手につけるようになりましたよね。
勝手にタグ付けできるので、それがほんとうに信用できるのかというのはありますね。
(直也)レイティングについては、Googleがすでにやっていることで、信頼度が高い人が信頼をつければそれが高くなる、PageRankがそうですね。
でもネットのいいところは、人気があるところが間違ったことを書けば淘汰されますよね。
その前提があるから、それが健全に働いているうちは数値化はいらないでしょう。
■ブログについて
――始めたきっかけは何でしたか?
(橋本)会社ができたということをまずブログに書きました。翌日から書くことがなく、書評とか新しく始めたビジネスのことを1回2回書いたのですが、会社の宣伝にしようと思ったら続かないので、書評とかソフトウェア評になっていきました。
――ブログを書く前にサイトをつくられていましたね。
(橋本)ブログを書く前に「アクセス向上委員会」というコミュニティとメールマガジンをやっていて、3万人くらい配信していました。サイトも当時はけっこうな人気サイトで、Yahooのクールマークがついていました。
ものを書き始めたのはずいぶん前で、もともとは雑誌などのライターなどをしていて、その血が騒いだという感じですね。
――CMSを探したということではなく、たまたまMTを入れたということなんですか?
(橋本)現実的にいうと、本業のほう(コンサルティング)でいろんな会社にこれからブログがブレイクしますよと言っていました。そこで自分もMTを試してみなくてはと思い、またいろんなCMSやブログのASPを試していたんです。
――ブログをやっていることは役にたっていますか?
(橋本)そうですね、すごく役にたっています。ブログさえ書いていれば、異業種交流会に行かなくても行ったのと同じ効果があって、勝手に自分の分身がいろんなところでしゃべってくれるようなものなんですね。というのは、読者とお会いすると、自分がしゃべらなくても相手が自分のことを知ってくれていて、話が早いのです。
仕事でも役立っています。コンサルティングでは、「自分がどんなことに興味があるか、なにを知っているか」をいかに皆さんに知らせておくことができるかは大事なので。
――直也さんのブログを書き始めたきっかけは?
(直也)当時自分はニフティの社員でホームページサービスの運用などをやっていました。ニフティには、ホームページサービスの一環として日記サービスがあったのですが、それを新しくしようと。そういえば最近ブログというのを聞いたなと思い、MTをいれたんです。
――ブログは仕事に役立っていますか?
(直也)(転職につながっているので)役立っているんでしょうね。
自分では「ブログの人」みたいに言われるのは嬉しいというよりも「それがメインじゃない」と思うのですが、でもそのおかげでいろんな人と知り合いになっているのはあります。
(シックスアパートの)宮川さん(BlogHacksの共著者)に会ったのもブログがきっかけでした。
――ブログを書くにあたっての情報収集はどうされていますか?
(橋本)人から集めることが多いでしょうか。70人くらいMSNメッセンジャーに登録しています。それぞれ、なにかの専門家か当事者なんです。
またURLを送ってみて意見を聞いたりします。
あとは検索でしょうか。とにかくメモ好きなんです。紙でもデジタルでも。
家に帰ると、今日メモしたことをGoogleで検索します。
紙のメモはその日のうちにデジタル化しておきます。
クリップしておく方法は、紙copiとか、ZakuCopyプラスChangeLogとか。
また、BlogMarksというアメリカのSBMは見ています。けっこう世界中のサイトがブックマークされています。
(註)
紙copi  http://www.kamilabo.jp/
BlogMarks http://blogmarks.net/
――直也さんはいかがですか。
(直也)けっこう刻々と(情報収集方法は)変わっています。
以前は、@ITとか日経ITProなどの大手メディア系サイトを読んでいたのですが、最近はRSSリーダーに注目している人のサイトを全部登録してあります。
あとは、最近はSBM(ソーシャルブックマーク)です。
はてなブックマークだけでなく、del.icio.usでも、「この人は」という人のブックマークしたものをチェックしています。
――プログラマーは集中しないといけない仕事で、情報に追いかけられるのをやめようと思ったりなどは?
(直也)自分がこういう立場だというのもありますが、新しい技術を追いかけなければいけないのです。それをやめたら、今知っている技術でしかものをつくれない、新しいイノベーションを起こせない。それをやめることは絶対にないです。
――ブログを書くのにどのくらい時間をかけますか?
(橋本)メモができていればもうあっと言う間です。メモができている状態のものをできている順から書いています。自分のために、自分のデータベースをつくるためにつくっている、それが動機付けになっています。
(直也)自分は書く時間はあまり決めていないですね。
技術の話題は時間がかかります。自分で試してから書きますので。
一度、夜の9時くらいにブログに書こうとコードを触り始めて、気づいたら朝の4時ということがありました(笑)。
一方、会社の話とか書評は、30分とか1時間くらいです。僕は橋本さんと逆で、考えながら書いています。
BroadbandWatchなどに書いているものは、頭のなかで組み立てて最終的な結論を出して、アウトラインができてから書いています。
(註)
BroadbandWatch  http://bb.watch.impress.co.jp/
――ブログを書くモチベーションは何ですか?
(直也)最初はアクセス解析のグラフを見て喜んでいたのですが、段々、いろんな人に会うようになって、変わっていますね。
最近はアクセスも一定になってきているので、あまり見ません。
でもSBMでたくさんブックマークされると、「今日は良い記事を書いたのかな」とは思って、達成感がありますね。
――ブログをやっていて良かったことは。
(橋本)ブログをやっていて良かったなと思うのは、運が良くなったということですね。
要は人とつながっているからということなんですが、なにか困ったことがあると助けてもらえたり、仕事がきたりというのはありますね。
(直也)有名になったことでしょうか。
有名になると自分が発言したことがちゃんと聞いてもらえるんです。
あまり知名度がない人が「最近のWeb2.0が」とか書いてもさほどの反応が得られなくても、伊藤直也が書くと、「最近はWeb2.0だ」とか「これからくる」とか思われるわけですよね。
大きいことをやるにはそれなりのバックグラウンドが必要で、それを、ブログを書くことで手にいれたというのは大きいですね。
――ブログを通じての出会いはありますか。
(直也)優秀なプログラマとの出会い、全然自分と違う分野の人との出会いなどはありますね。
――実名で書いていることでの困ったこと、良かったことはありますか。
(直也)困ることはないですね。匿名で書いていて自分の実生活に結びつかないのはもったいない気がします。名前はラベルにすぎません。その人がどういうことをやっているかが大事だと思います。名前をだせば何かが起こるのに、隠しているために起こらないということはあるのではないでしょうか。
また、書くことで自分に情報が集まりますよね。書いたこと以上に自分にインプットが得られます。

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これ以外にも、この場限りのお話もあり、大いに盛り上がった会でした。
集まったのもさすがにブログやそのまわりの技術に関心の高い方々であったせいか、会が終わっても、皆さん、名残惜しそうに話しこんでいらした様子が伺えました。


●座談会に参加された方のレポートはこちらです:

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News Clipping
posted by sumie at 02:25| Comment(2) | TrackBack(1) | e-biz/web/blog | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TBありがとうございます&原稿ご苦労様です。

とてもまとまっていて、参考になりました。(ほんと、超うれしいかも)
Posted by らむね at 2005年09月07日 02:12
らむねさんコメント&TBありがとうございます。
楽しんでいただけて、私もうれしいです。
Posted by maximiliana at 2005年09月07日 12:55
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FNP 第3回アルファブロガー座談会
Excerpt: 今回のゲストは、情報考学 Passion For The Futureの橋本大也
Weblog: うら@らむ 村山らむねの裏ブログ
Tracked: 2005-09-07 02:13